ディープ・ストーリー

今読んでいる本(河野龍太郎 唐鎌大輔『世界経済の死角』)で、「ディープ・ストーリー」という言葉が紹介されていました。

 

著者の河野氏曰く

ディープ・ストーリーとは、「「あたかもそのように感じられる」心の中の物語」のことであり、必ずしも事実とは一致しない場合があるものだということです。

 

そしてそれが、人々の政治選択に大きな影響を与えており、とりわけ、近年のアメリカ政治を語る際には、有権者がどのような「ディープ・ストーリー」を持っているのかが重要になっています。

そしてそれは、時に有権者にとっての合理的な損得よりも強力に政治選択に影響を与える場合があります。

 

トランプ大統領が自身を、既存の政治組織(曰く、闇の政府)を打ち破ろうと戦ってきた存在とアピールし、人々にそう信じ込ませてきました。

大統領選挙でトランプを支持した国民の中で、こうした言説を信じ込んでいた人がいたのは少なからずいたでしょう。

 

そして、こう信した、共感した人々の心の中には「不平不満」という感情があり、

その感情の背景には、近年の経済的な混迷があることは間違いありません。

 

「ストーリーを語り、共感を得る。」

 

これはビジネスでもよく使われる手法であり、政治の世界においても否定されるものではありません。

しかし、事実と異なると分かっていながら、事実はより複雑で繊細なものであると理解しながら、あるいは無知蒙昧ゆえに、政治家が堂々と嘘を言ったり、他者を貶めたり、極端な言説を振り撒いて人々の不平不満を利用するようなことはあってはならないと私は思います。

 

人の道に違わず、人の心に向き合う政治。

それがあるべき政治です。

 

実践は難しいですが、人の表面的な感情を煽るのではなく、真に人の深層に届く政治を、私たち政治家はあきらめずに目指していく必要があります。

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